全てを失っても手に入れたい女がいる 2
…え!?
これ…て…
うそ…だろ…
口に入れた途端、あの日の悪夢が走馬灯の様に涼夜の頭の中を駆け巡る。
憎しみ、恨み、怒り、体から溢れる負の感情を、拳を握り必死に涼夜抑えていた。
「あ、あんた!…名前は!」
先程迄の様子と違い、荒々しい気を放つ涼夜に、怯えながらも、秘書は「さ…桜庭 咲…です…」と名乗った。
ふっ…
なんだ人違いか…チェッ
「…なにか?」
「いや、人違いだった」
あの時の女だと思ったのに
天使の様に笑い
笑顔でいれば良い事がある…
あの子とおんなじ事言う奴がいるなんて…
それだけ…アホが多いって…か…?
ふん!
世の中そんなに甘く無いのに
あの時の女を見つけて
そんな甘いもんじゃ無いって教えて、俺達が味わった苦しみを教えてやる。
「そんなもん食べても、笑顔なんてならないだろ?
笑顔で居ても、なんも良いことなんてありゃしないだ!?
あんたも直ぐ知る事になるさ!
笑顔で居ても何も良いことなんて無いって事を!」
涼夜は、彼女に言い捨てると、一本電話したら戻ると言って非常階段へと向った。