全てを失っても手に入れたい女がいる 2
二人がタクシーを降りた場所は、古い店ばかりが並び、営ってるのか閉まってるのかも分からない。
人通りもほとんどなく、新聞やゴミ袋が風で舞ってる様な閑散とした商店街だった。
そんな商店街の端の方に、破れたパープル色の看板が目に入った。電球も切れているのか点いておらず、なんとか店の名前だけは分かった。〔バー ブルース〕
名前も古びた名前だと思いながら、バーのドアを開けると、店内には、バーテンの男とカウンターには二人のお客がいた。
「あの…ここのお客さんで、スキンヘッドって名前の人に、俺達会いに来たんですけど…?」と魁斗がバーテンに聞くと、カウンター席に居たヒラヒラの安っぽいドレスを着た、スキンベットのオカマが振り返った。
振り返ったおカマを見て、直ぐに涼夜は悟った。
はぁ…
どうせ、俺に会わせろって頼まれたんだろよ…?
モデル仲間の昔の友人の友人の友人からの紹介で、人探しなら、この店の客でスキンヘッドって名の奴に聞くと良いと教えられ、どんな奴かと思ったら、ただのハゲたオカマだったってオチかよ!?
クッソー 覚えてろよ!?
親父は、俺がゲーだと言うことを隠そうと、色々手を回してる様だが、モデル仲間の間では周知の事だ。
まぁ良い。
聞くだけ聞くか?
「スキンヘッドさんよ?
俺、人探ししてるんだけど、この辺で、メチャクチャ可愛くて、掌に赤いハートを持ってて、天使の様な微笑みをするマリーって名前の女、知らないか?」
「メチャクチャ可愛くて、天使の様な微笑みって私じゃダメかしら?」とスキンヘッドのおカマが微笑む。
あ゛なんだと!?
「魁斗、このおカマどっかに埋めてこい!!」
スキンヘッドのおカマは、睨みを利かす涼夜に怯え、店の奥のトイレへと逃げ込んで行った。
するとカウンターの端の方に座ってた男が、涼夜に話し掛けてきた。
「なぁ? 掌にハートがあるって、変な痣の事か?」
痣だぁ?
「違う!赤い綺麗なハートだ!」
「なら違うか…それに名前もマリーなんかじゃなかったしな…
チェッ!金になると思ったのに…違うのかよ…」