全てを失っても手に入れたい女がいる 2
目を覚ますと、いつ帰って来たのか、魁斗がいつもの様に全裸で俺の横で眠って居る。
俺は、魁斗を起こさない様に静かにベットを抜け出し、窓際に立ち朝霧の中の庭を眺める。
首を左右に動かし、そしてうでを回す。
軽く準備運動した後、庭へ続くガラス戸を開く。
ふぅ…
流石に裸は寒い。
そのまま暫く庭を歩いていると、庭に取り付けてあるいくつものセンサーライトが、俺の姿を照らす。
すると、既に仕事を始めている使用人の悲鳴や、物を落とす音が忙しなく聞こえる。
そして…
「おぼっちゃま!!」高城の絶叫が聞こえ、魁斗までが全裸のまま駆け寄り、シルクローブを俺に掛ける。
「お前は、俺に風邪引かせる気か!?」と半ギレ状態の魁斗からは、微かに女性物のシャンプーの香りがする。
「昨夜、恵美ちゃんとヨロシクしてきただろ?
女の匂い持ち込むなって、いつも言ってるだろ!?
高城に気づかれる!」
「はいはい…今度から気をつけるよ…」
視線を上げれば、二階の窓辺に親父がいた。
俺は魁斗が掛けてくれたローブを脱ぎ、魁斗にはおらせると、見せ付けんとばかりに、魁斗に濃厚なキスをする。
「お前、歯磨いてないだろ? 別料金だからな!?」と怒る魁斗に「お前もだろ?」と言って抱きしめる。
離れて観てる者達からしたら、俺達の会話は聞こえ無いし、どう見ても朝からラブラブな美しいゲイとしか見えないだろう。
慌てふためき駆けつけた高城は、毛布を俺達に掛け早く部屋に入る様にと急かす。
二階の窓辺で、顔を歪め俺達を見下ろしてる父に、俺は右手を挙げ手を振る。
「あっ! お父様、おはようございます!」
見えますよ?
あなたの苦虫を噛み潰したような表情…
ここからも…
待っていてください。
もっと歪めてあげますから?