ここはディストピア あなたは亡国の騎士 わたしは愛玩物
「それで、私は、どうなる?この地を明け渡し、カピトーリに連行されて、処刑されるのか?」

まるでドラマか小説の続きを聞くように、イザヤは尋ねた。


「……ですから、粛正は終わりました、と、申し上げたはずですが。すぐに恭順なされば、今さら、イザヤどののお命を取ることはございますまい。」


イザヤが既に、貴族でも騎士団長でもないから……殺されなくてもいいのね……。


何となくほっとした私とは対照的に、イザヤは納得していないようだ


「私は、騎士団長だったんだぞ。王や他の騎士たちが殺されたのに、私だけお咎めなしでは、道理が通らぬ。」


……よけいなことを……。

やきもきするわ。



ティガは苦笑した。

「いつまでも青臭いことをおっしゃらないでください。もう少し狡猾になっていただかないと……先が思いやられますね。」



ふてくされたように、イザヤが口をつぐんだ。



……拗ねてる……。

かわいいなあ。

と、ついつい好意的に見てしまう恋心を抑え込んで、私はティガに尋ねた。

「恭順ってことは、この館と領地を明け渡せばいいのね?……イザヤは、どこへ行って、どう生きても、自由にしていいの?……それとも……新しい帝国に、協力を要請されるの?」


ティガは軽く首を傾げた。

「具体的な要請はないでしょうが、まったくの自由というわけにはいきますまい。……例えば、オーゼラの残党を集めて復興や独立といった、インペラータに反抗する動きがあるならば……」


「馬鹿馬鹿しい。我が国には、もともとそんな力はない。」

イザヤが吐き捨てるように言った。


ティガは無表情で頷いた。

「ええ。私もそう思います。……ですが、これまで征伐した国々で当たり前のように発生していますので……イザヤどのも監視対象となることは仕方ないでしょうね。」


「……監視……」

苦虫を噛み潰したような顔のイザヤ。



まあ……命が取られるわけでもないのなら、監視ぐらい我慢しろと言いたいけれど……実際に四六時中監視されてる生活を始めたら……病んじゃうかもしれない。



「たとえば……管理人として、イザヤがこの館に住み続けることは、できないの?」

ダメ元で聞いてみた。




「無理でしょう。今申し上げました通り、不穏分子たり得る者は管理下に置きたいものですから。」


けんもほろろのティガに、重ねて尋ねてみた。
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