ここはディストピア あなたは亡国の騎士 わたしは愛玩物
ピクニックの概念がこの世界にあるのかどうかわからない。
貴族で騎士のイザヤが、ピクニックを楽しめるかも知らない。
でも私は、リタでもティガでもなく、イザヤとのピクニックを想像してワクワクした。
イザヤが、一番忌憚なく自分のことを話してくれるから、かな。
いろんな話をもっと聞きたい。
この世界のこと。
この国のこと。
イザヤのこと。
「さっきの楽器……アルファ?また聞かせてほしい。」
だいぶ暗くなってきた。
オースタ島が遠くなり、白い建物も見えなくなってしまった。
イザヤの館のある湖岸もまだまだ遠い。
心細さをごまかすように私はイザヤに話しかけ続けた。
「気に入ったのか。よかろう。楽器は我が家の代々の道楽だ。順に聞かせて進ぜよう。」
順に?
「いろんな種類の楽器があるの?弦楽器、木管楽器、金管楽器、打楽器?」
どこまで通じるのかわからないけど、私はそう分類して聞いてみた。
イザヤはニッコリと笑って、得意そうに顎をあげた。
「この世界のありとあらゆる楽器がある。と、断言できる。先祖もみな借金してまで集めてきたからな。……まいらは、何か弾けるか?」
突然そう振られて、私はグッと詰まった。
……一応、ピアノは習ったことがある。
「ピアノ。わかる?ピアノ。ちょっとだけ。すぐ辞めちゃったの。」
両手でピアノを弾く仕草をしながらそう答えた。
「……クラヴィシンか?」
イザヤもまたピアノを弾く仕草をしてそう言った。
くら、う゛ぃしん、ね。
「では、弾いてみよ。」
そう言ったイザヤはとても楽しそうに見えた。
本当に音楽が好きみたい。
「う。わかった。でも久しぶりやから、ちょっと練習させて。指が動かへんかも。」
そう言ってから、ついでにイザヤにお願いしてみた。
「イザヤ。あのね。楽器も弾いてみたいけど、私、この国のことを勉強したい。文字とか、歴史とか、政治経済、天文、地理。まあ、文字だけ教えてもらえたら、あとは館の書斎の本で自分で勉強するから……」
「まるで男だな。」
イザヤは笑ってそう揶揄した。
……そうか。
この世界では、女は勉強しないのか。
ああ、そういうことなんだ。
だから、リタは、私の知りたいことに、全く興味なさそうだったのか。
「……ダメ?もしかして、行儀作法やダンスやお裁縫を学ぶべきだった?」
時代錯誤な男尊女卑のイメージでそう聞いてみた。
貴族で騎士のイザヤが、ピクニックを楽しめるかも知らない。
でも私は、リタでもティガでもなく、イザヤとのピクニックを想像してワクワクした。
イザヤが、一番忌憚なく自分のことを話してくれるから、かな。
いろんな話をもっと聞きたい。
この世界のこと。
この国のこと。
イザヤのこと。
「さっきの楽器……アルファ?また聞かせてほしい。」
だいぶ暗くなってきた。
オースタ島が遠くなり、白い建物も見えなくなってしまった。
イザヤの館のある湖岸もまだまだ遠い。
心細さをごまかすように私はイザヤに話しかけ続けた。
「気に入ったのか。よかろう。楽器は我が家の代々の道楽だ。順に聞かせて進ぜよう。」
順に?
「いろんな種類の楽器があるの?弦楽器、木管楽器、金管楽器、打楽器?」
どこまで通じるのかわからないけど、私はそう分類して聞いてみた。
イザヤはニッコリと笑って、得意そうに顎をあげた。
「この世界のありとあらゆる楽器がある。と、断言できる。先祖もみな借金してまで集めてきたからな。……まいらは、何か弾けるか?」
突然そう振られて、私はグッと詰まった。
……一応、ピアノは習ったことがある。
「ピアノ。わかる?ピアノ。ちょっとだけ。すぐ辞めちゃったの。」
両手でピアノを弾く仕草をしながらそう答えた。
「……クラヴィシンか?」
イザヤもまたピアノを弾く仕草をしてそう言った。
くら、う゛ぃしん、ね。
「では、弾いてみよ。」
そう言ったイザヤはとても楽しそうに見えた。
本当に音楽が好きみたい。
「う。わかった。でも久しぶりやから、ちょっと練習させて。指が動かへんかも。」
そう言ってから、ついでにイザヤにお願いしてみた。
「イザヤ。あのね。楽器も弾いてみたいけど、私、この国のことを勉強したい。文字とか、歴史とか、政治経済、天文、地理。まあ、文字だけ教えてもらえたら、あとは館の書斎の本で自分で勉強するから……」
「まるで男だな。」
イザヤは笑ってそう揶揄した。
……そうか。
この世界では、女は勉強しないのか。
ああ、そういうことなんだ。
だから、リタは、私の知りたいことに、全く興味なさそうだったのか。
「……ダメ?もしかして、行儀作法やダンスやお裁縫を学ぶべきだった?」
時代錯誤な男尊女卑のイメージでそう聞いてみた。