ここはディストピア あなたは亡国の騎士 わたしは愛玩物
……そう言えば、カピトーリはまだ辺境と戦争中だったっけ。

名ばかりとは言え、イザヤは属国の近衛騎士団長なわけだから、勝手に入国してると、確かにまずいか。


「じゃあ、機会ができたら連れてってね。」


そうお願いすると、イザヤは優しい瞳でうなずいた。








「そなたにはいないのか?恋人は?婚約者は?婚姻の形態は、どのようなものだ?」

月の破片の星の川に見とれてると、イザヤがそう聞いた。


「いない。今のニッポンはお見合いもあるけど、基本的には自由恋愛なの。結婚は一夫一妻制。」


そう説明してると、孝義くんの顔が脳裏に浮かんだ。



「ふぅん?では、子供のできない家もできるのではないか?血縁より能力主義で家を継続するのか?」


イザヤの指摘で、子供のいないまま奥さんを亡くした孝義くんを、ますます思い出した。


「基本的には血縁。でも昔のように、本妻に子供ができないからって、側室や二号さんに産ませるって感覚は廃れたよ。そーゆーのは不倫って言って、社会的には非難されるかな。……まあ、一概には言えないけど。」


孝義くんの奥さんは、結婚後に病気になり出産できない身体になってしまった。

大きな寺院の跡取りを残すため、周囲は離婚して別の女性と再婚するか、あるいは婚外子を作るようしつこく勧めたらしい。

でも孝義くんは頑として譲らず、病気の奥さんを慈しんで大切にした。


その奥さんも2年前に亡くなり、孝義くんは現在に至るまでずーっと、後妻を迎えるよう周囲に説得され続けている。


……本気で私も立候補したいんだけど……相手にされてないのが現状だ。




「では、親類から養子を迎えるのか?」

イザヤはよほど気になるらしい。


「そういうケースもあるね。でも夫婦養子って言って、単に家やお墓を守るためだけに、大人になってから養子に入ることが今は増えたみたい。」


私のお母さんは12歳で施設から竹原家に養子として迎えられたけど、特殊な事例だろう。


ちなみに、私の叔母さんも出産できなくて、旦那さんの従妹を夫婦養子にしてる。



「家を継ぐのは男子じゃなくてもいいのか?」

「今はね。婿養子って手もあるし。……この国は男子だけ?イザヤは?さっき、お姉さんと妹さんがいるって、言ってたっけ?ご兄弟は、なし?」


そう尋ねると、イザヤの顔が曇った。
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