策士な課長と秘めてる彼女
「は、陽生さん。あなた何して・・・」

「それはこっちの台詞だ」

突然現れた不機嫌な様子の長身イケメンに驚いたのか、周囲の人々は絵のお礼を言って去っていった。

陽生と二人、その場に残される日葵。

「私は有給休暇を消化中です」

「偶然だな。俺もそうだ」

偶然なわけがあるか!

と日葵は思ったが口にはしない。

「そうですか。それならここにいるのも偶然ですか?」

ツンとした日葵の様子に

「残念ながら、それは違う。日葵を探しに来た」

と、陽生は素直に認めた。

「昨日、秘書課の連中に何か言われたんだろう?誤解を解きたくて・・・」

「違います。それはきっかけに過ぎません。私は陽生さんの本音を知って、この結婚を考え直すべきではないかと思い、柊くんの仕事に便乗して一人になる時間を作ったんです」

陽生を見る日葵の目には、昨日の朝までの甘い雰囲気は全くない。

むしろ、汚いものでも見るかのような嫌悪感さえも汲み取れる。

「一人になって何か結論は出たか?」

「・・・まだです。そんなに簡単には結論は出ませんよ。それよりも課長は会社にお戻りください。仕事が溜まっているはずでしょう?」

こんなときでも陽生を気遣う日葵に、陽生は苦笑する。

「残念なから有給処理はもう済んでる。日葵と話すまでは帰らない」

陽生は背中側から日葵をやんわりと抱き締めてきた。

日葵も抵抗はしない。

何だかんだ言っても、わざわざこうして探しに来てくれた陽生の行動が嬉しかったから・・・。
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