策士な課長と秘めてる彼女
「昨日から何をしてたんだ?」

「昨日は映画のレイトショーを観て市内のビジネスホテルに泊まりました」

「まさか・・・」

「もちろん一人ですよ」

あからさまにホッとする陽生に日葵は笑いが込み上げる。

「そして今朝、バスでこちらに移動して、水族館でイルカとペンギンとアザラシに触りました。ストレス発散になりましたよ」

一眼レフカメラの保存データを見せて

「可愛いでしょ?イルカとペンギン」

と笑う日葵は、どこかよそよそしかった。

「可愛いな・・・」

続かない会話に、日葵は諦めてカメラとスケッチブックをバッグにしまった。

「じゃあ、安否確認は終わったと思いますのでここで解散しましょうか」

「待て、日葵」

立ち上がった日葵の腕を陽生が掴んだ。

「ダメだ。話をしないと・・・。日葵の気持ちは日葵にしかわからない。俺の気持ちも日葵が聞いてくれなきゃ伝わらないんだ」

警察犬ばかりを相手にしてきた日葵は、少し言葉が足りないと自覚している。

「そう、ですね。話をしましょう」

再び日葵はその場に腰かけた。
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