策士な課長と秘めてる彼女
「ところで、蒼井はなぜ飲み会に出ない?」

料理を黙々と食べ続けること10分。

突然、真島がそんなことを言い始めた。

「何故それを?」

゛知っているのですか゛

と続けようとしたが

「結構、社内じゃ有名な話だ。蒼井の彼氏の束縛が強くて飲み会にも参加させて貰えないらしいと」

と真島が続けたので驚いた。

「柊くんはそんなんじゃ・・・」

「柊・・・っていうのか」

うっかり名前を読んでしまって日葵は自らの口を右手で塞いだ。

「アフターファイブは拘束。飲み会にも参加させない。旅行にも連れていってくれないらしいな」

日葵は酔いの回ってきたせいか、真島の言い草に腹が立ってきていて、それが少し表情に出てムッとしていた。

「私が好きでしているんです。柊くんは悪くありません」

「週末にデートとかちゃんとしてるのか?」

真島は、質問の合間にもちゃっかりと日葵の分の酎ハイやカクテルを追加注文している。

それが、日葵の好きな飲み物とピッタリ合っているものだから、ついつい日葵は進められるままにそれらを口にしていた。

「してますよー。のんびりお散歩とかー、ジョギングとかー」

日葵はクスクスと笑いながら、楽しそうに柊の話をしていた。

「へえ、アクティブな彼氏なんだな。キャンプとか登山とかはしないのか?」

「アウトドアは制限が多いからですねえ・・・」

フム、と首を傾げる日葵はいつもよりも多弁で遠慮がない感じだ。

「明日も・・・どこかに出かけるのか?」

「そうですねえ。雨が降らなければいつものコースですかね?」

「いつもの?」

「家の近くの臨海公園です。走るのに丁度いいんですよ。柊くんも喜んで走ってます」

ニコニコと笑う日葵は本当に柊のことが大好きといった感じだ。

「何時頃行くんだ?春とはいえ、もう昼間は暑いだろ」

「いつも朝と晩出かけてます。運動不足も解消されるし、何より私が柊くんといると癒されるから」

話し終わるタイミングで都合よくお皿が空になった。
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