策士な課長と秘めてる彼女
陽生は日葵を横抱きにしながら、器用にカードキーを使ってドアを開けた。

ゆっくりと日葵をベッドにおろすと、気がついた日葵が陽生を見つめ、両腕を伸ばした。

「・・・陽生。だっこ」

あまりの衝撃に陽生の心臓が跳ねる。

上着を脱ぎ、日葵の隣に横になると、陽生はそっと日葵を抱き締めた。

「ねえ、槙ちゃんと日葵、どっちが好き?」

「比べるまでもない。日葵」

「陽くん、浮気なんてしないで・・・ね?お願い」

ここでも上目遣いの破壊力は健在だ。

一瞬、10歳の弟が幼かった頃に一緒に見せられたサン○オアニメの主人公、マ○メロディ(ウサギだったはずだ)の決め台詞が頭を駆け巡った。

敵キャラをハートでメロメロにする必殺技に、陽生は苦笑したものだが、実際にその場面に遭遇すると、あれもまんざら嘘ではないと実感した。

「俺を誘惑してどうするつもりだ?」

「槙ちゃんには、あげないもん」

ギュッと抱きついてくる日葵は、陽生の限界を軽々と突破した。

「可愛すぎだろ。覚悟しろ」

「あん・・・」

目の前に差し出された甘いスイーツを、陽生が美味しくいただいたのは当然の成り行きである。
< 111 / 149 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop