策士な課長と秘めてる彼女
朝6時。

習慣とは恐ろしいもので、日葵は目覚ましなしで定刻に目を覚ました。

「おはよう、柊くん」

ベッドに横たわる塊に頬を寄せるが、いつものモフモフ感がない。

すべすべの肌、盛り上がった筋肉。

どう考えても人間のもので、犬ではない。

はて?

と日葵は首を傾げ、周囲を見渡すと、高級なインテリアに大きなベッド。

開け放たれたカーテンの向こうには、広大な海と空が広がり、朝日が登るところだった。

傾けたままの頭がズキッと痛む。

そういえば昨日は、陽生と一緒にフレンチを堪能して、シャンパンを飲んで・・・。

「朝からいいもの見れて幸せ」

隣から聞こえてきた声に、恐る恐る目を向ける日葵。

そこには陽生がいた。

もちろん陽生が゛いいもの゛と言っているのは景色ではなく、陽生の視線の先の日葵の裸だということはすぐにわかった。

日葵は慌てて掛け布で肌を覆う。

本格的にお酒に酔ったのは初めてだった。

しかし、日葵には大きな誤算があったのだ。

完全に酔っぱらってしまえば、てっきり記憶もなくすものだと信じ込んでいのだが、予想に反してすべての記憶がある。

お酒が進む度に、心の底から嫉妬心が溢れてきて、陽生に甘えたくなった。

抑えられない欲望は言葉と態度になり、その気持ちの赴くままに日葵は行動していた。

いつもは理性で押さえている部分が、脱抑制状態となり溢れ出す。

そんな奔放な自分を、もう一人の自分がしっかり観察していたのだ。

恥ずかしくてもやめられない。

優しく触れられて、甘やかされて、嬉しさに体が反応する。

日葵史上、あんなに甘えたになったのは初めてのことである。
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