策士な課長と秘めてる彼女
「日葵ちゃん、今どこにいる?」

昼過ぎ、日葵のスマホに高梨長門からの連絡が入った。

「今、自宅に戻ろうと高速に乗ったところです」

2日間のリフレッシュ休暇を満喫し、そろそろ家のことが心配になってきた日葵は、陽生の車で自宅に戻るところだった。

「落ち着いて聞いてくれ。輝顕と柊がやられた」

「・・・やられた?」

日葵の頭が真っ白になる。

「遺留品と目撃情報から犯人にたどり着いたアジトで、警察の気配に気づいた犯人がまず輝顕を襲おうとした。それを庇おうとした柊もろとも犯人に刺されたんだ」

「・・・て、輝顕さんと柊くんは無事なんですか?」

「詳しいことはわからない。輝顕のところには私が行く。日葵ちゃんは柊のところへ行ってくれ」

震える日葵に異変を感じて、陽生は近くのパーキングに車を停めた。

「高梨さんと柊がどうかしたのか?」

「犯人に、刺されたって・・・」

涙をこらえる日葵を陽生は抱き締めて励ます。

「大丈夫だ。高梨さんも柊も強い。それで、これからどこへ向かえばいい?」

「H県警の鑑識課内にある警察犬専用の診療所です」

カタカタと震える日葵だったが、陽生から伝わる温もりに安心感を覚える。

震えがおさまった頃合いを見て、陽生は暖かいココアを自動販売機で購入して日葵に手渡し、県警本部へ車を走らせた。
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