策士な課長と秘めてる彼女
「柊くん」

鑑識課内の警察犬専門の診療所についた日葵は、獣医師に案内された室内に入った。

ゲージ内に寝かされた柊は、背中から腹部にかけて包帯でぐるぐる巻きにされていた。

「背中を15cmほど切られていました。恐らく高梨警部補を身を呈して庇ったからでしょう。幸い内臓や肺には達していませんでしたから傷を縫うだけで済みました。しかし、経過を見るために数日は入院ですね」

獣医の言葉に続けて、

「大切な家族に怪我を負わせて申し訳ありませんでした」

と、鑑識課の課長も謝罪をしてくれた。

「高梨警部補は大丈夫なのですか?」

「高梨は腕を切りつけられましたが、柊くんが庇ってくれたおかげで、胸や腹を刺されずに済んだんです」

麻酔の効果でウトウトとしていた柊が日葵と陽生に気が付き尻尾を振る。

「柊くん。輝顕さんを守ってくれてありがとうね」

「よく頑張ったな。偉いぞ」

二人の言葉がわかるのか、柊はハッハッと舌を出して返事をした。

「あとはお任せ下さい。週末にまた連絡します」

「毎日面会に来てもいいですか?」

「ええ、12時頃なら大丈夫ですよ」

日葵と陽生は、柊の命に別状はないことを確認し、安心して高梨長門に連絡を入れた。
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