策士な課長と秘めてる彼女
警察病院の整形外科病棟に高梨輝顕は収容されていた。

輝顕の傷は深く腱まで達していて、手術室で洗浄後、縫合したそうだ。

左腕ではあるが、警察犬を扱う業務にはしばらく差し支えが出るだろう。

「輝顕さん、無事で良かった」

輝顕の顔を見るなり泣き出した日葵の頭をポンポンと輝顕が撫でる。

その横で、輝顕の妻・ゆかりと娘の愛海が二人を見つめているのに気がついた。

「日葵ちゃん、柊くんのおかげでこの人が命拾いをしたの。日葵ちゃんがしっかり訓練してくれたおかげよ。ありがとう」

「柊たん、かっくいー(カッコいい)」

愛海の片言言葉が場を和ませてくれる。

「マジで感謝してる。やっぱ警察犬スゲーわ」

元々警察犬に憧れて警察官になった輝顕だ。

輝顕は今回のことでよりいっそう警察犬の虜になったようだ。

「だが、心配なことがまだ残ってる。俺たちを刺した犯人は逃走してまだ捕まっていないんだ」

輝顕の言葉に、愛海以外のこの場にいた全員が固まる。

「この期に及んで逆恨みする余裕はないだろうが、念のため俺の家族と日葵にはガードをつける。犯人逮捕までくれぐれも気を付けてくれ」

これで日葵は、蒼井家に戻ることなく警察が用意したホテルに缶詰めにされることが決定した。
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