策士な課長と秘めてる彼女
「もう陽生さんは仕事に戻ってください。私は十分余暇を満喫させてもらいましたから。有給休暇だから返上できないと仰るのなら、自宅マンションに戻って。陽生さんを巻き込みたくない」

「呼び方が戻ってる。今朝みたいに陽生って呼べよ」

警察の準備したホテルは、ビジネスホテルではなくセキュリティのしっかりした一流のホテルだった。

チェーン展開のビジネスホテルでいいと日葵は言ったのだが、そういったビジネスホテルでは死角が多いこと、警察を配置するにあたって検討すべき点が多いことなどが問題としてあげられ却下された。

高梨家は蒼井家と違い、警察犬訓練所として幅広く認知されている上に、生き物を飼育しているので、家族でホテルに避難というよりも、訓練所周辺に警察を配置した方がよいと判断され、長門とゆかり、愛海は自宅にとどまることになった。

輝顕と柊を襲った犯人は、過去に警察犬を連れた警官に捕まり、その後の人生を狂わされたと逆恨みをしていたらしい。

前回の罪を償い出所したタイミングで犯人がやりたいと思っていたことは、警官と警察犬に復讐すること。

親しい知人にそう語っていたらしい。

今回の罪状は不法侵入と盗難。

犯行現場にわざと痕跡を残し、警官と警察犬をおびきだす。

輝顕と柊は、犯人と面識があるわけではなく、要するに

゛警官と警察犬なら誰でも良かった゛

ということだろう。

それならば日葵が柊絡みで狙われることはないと思うが、反撃した際に、柊は犯人の右腕を噛んでいた。

食らいついて離れない柊を何回か刺したらしい犯人が、柊に逆恨みをしていることは十分に考えられる。

と、いうことで大事をとって、日葵は警察に囲われているのだ。
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