策士な課長と秘めてる彼女
「協力って何をしてもらったんだ!」

怒鳴る橋満社長に

「べ、別に、大したことじゃないよ」

誤魔化そうとする槙を、橋満社長は容赦なく追い詰める。

「事と次第によってはお前を今日付けで退職させる。もちろん部長や課長達も同罪だ」

「や、それは困る。奥さん達に槙が殺されちゃうじゃん」

ギャル語が抜けきれない槙は付け爪を触りながらそっぽ向いた。

「ちょっと゛蒼井゛を凝らしめてって言っただけだよ」

槙が関係を持った社長は、谷部凛太郎38歳。

女好きで手段を選ばない傲慢社長として有名だ。

槙によると

槙がご執心の相手が真島陽生であると知り、凛太郎は陽生の周辺を調べたらしい。

陽生が思いを寄せる相手が日葵であることは簡単にわかった。

なぜなら陽生は彼女の家に押し掛けたあげく居候を始めたからだ。

日葵と同居する犬が警察犬であることもわかった。

凛太郎の子分に、先日出所してきたばかりの、警察官と警察犬に恨みを持つ男がいる。

凛太郎はその男を唆し、同時に数ヵ所で警察犬が駆り出される事件を起こさせた。

自宅犬である柊が駆り出されるまで、それを続けさせた。

全ては槙を満足させるための凛太郎の気まぐれ。

思い起こせば、陽生が日葵の家に住むようになってから、急に警察犬の出動が増えたと長門が言っていた。

輝顕と柊が怪我をしたのは自分のせいであったと知り、日葵は唇を噛んで俯いた。
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