策士な課長と秘めてる彼女
「ごめんなさい。私のせいですね」

「違うだろ?そう思わせることが相手の策略で、俺も日葵も被害者だ。犯人の手掛かりがわかったんだから父さんに任せておけば犯人逮捕も時間の問題だよ。安心しろ」

泣きそうになっていた日葵だったが、陽生に支えられ、上目遣いで彼を見つめながら頷いた。

「まあ、前回お会いしたときは何かよそよそしかったけど、今日はラブラブなのね?」

「本当だ。日葵さん、僕のこと忘れてない?」

「お義母様、勇気くん・・・!お久しぶりです。お恥ずかしいところをお見せして、お義父様にもご迷惑をおかけして申し訳ありません」

真佐子と勇気の言葉に、人前でイチャイチャしていたことに気付いた日葵は真っ赤になって謝った。

「お義父様、お義母様って呼ばれると感慨ひとしおね。娘が一人増えたみたいで嬉しいわ」

「僕もお姉さんができて嬉しい」

何事もなかったかのように接してくれる2人の優しさが嬉しかった。

もうすぐ両親と祖父母が来る。

彼らに聞かれなくて良かった、と日葵は思い、

「あの、勝手なのですが、今の話は両親と祖父母には内緒にしていただけませんか?」

「大丈夫。そのつもりよ。日葵さんを危険にさらさせたなんて知れたら破談になるかも知れないものね?わかった?勇気も黙っておくのよ?」

「わかってるよ。僕を侮らないでね」

さすが陽生の弟である。

毬ちゃん捜索の時は子供っぽく見えたが、実はふりだったのか?と思えるほど今日は大人びて見えた。

「ねえ、日葵さん、僕と中庭に行こうよ」

かと思うと、今度は子供っぽく、上目遣いで日葵に甘えてくる勇気。

「いいですよ・・・」

「ダメだ。たとえ弟でも日葵は貸さない」

「兄さん、誰のお陰で・・・」

「待て、勇気、話がある・・・」

じゃれ会う兄弟が微笑ましくて日葵は少し羨ましかった。

「せっかくだし、昼食も頂きましょうよ。予約は取ってあるのだし」

真佐子に促され、日葵も移動する。

ラウンジから見える景色は、まぶしい陽射しで初夏を思わせていた。
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