策士な課長と秘めてる彼女
「ここでいいです」

日本風の家屋。150坪はあろうかと言う土地は高い塀で囲まれている。

タクシーを降りた日葵を追って、真島が降りてくる。

「このまま少し待っていてください」

タクシーを待たせたまま、真島も蒼井家の玄関先までついてきた。

「・・・柊ってやつは出迎えもしないのか・・・」

「だから、それは私も望んでないんですって!」

゛さっきから柊のことを悪く言って、なにも知らないくせにこの人はなんなの?゛

と、日葵は心底腹を立てていた。

だが、結局、食事代もタクシー代も陽生に払って貰ってしまった。

「今日は本当にありがとうございました。金輪際、カチョーにはご迷惑をかけないようにしますので」

と、日葵は頭を下げた。

「紹介文の編集とか校閲とか色々あるのに、関わらないなんて無理だろう」

陽生の失笑に、日葵は頭を抱えた。

「そうでした。飲み過ぎたかもしれませんね。私」

「もう中に入れ。風邪を引く」

ぶっきらぼうだが、根底は優しいことには違いない。

「じゃあ、おやすみなさい。は、陽生さん」

「おう、また明日な」

手を振り、背中を向けて去っていく陽生に、

「明日はお休みですよ、課長」

と苦笑しながら、日葵は柊の待つ我が家へ入っていった。
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