策士な課長と秘めてる彼女
「谷部の手下が捕まったよ。高梨警部補や柊くんには申し訳ないが、その男は『今回、警察官と警察犬に怪我をさせたことで以前の無念を晴らすことができて満足した。今後は同じようなことはしない』と語ったそうだ」

ホテルに戻ってきた孝明の言葉にホッとするものの、日葵の中では割り切れない気持ちが渦巻いていた。

しかし、犯人が逮捕され、そのような発言をしたということは、輝顕も柊も、もう意味もなく狙われることはないだろう。

自ら寝た獅子を起こして再度恨みを買うつもりは日葵にはなかった。

「谷部の方は大丈夫だったのですか?執念深いと有名ですが・・・」

「チャイニーズマフィアのファン氏と警視庁の長官の名前を出したらあっさり引き下がったよ。槙のことは、Hashimitsuを手にいれるための駒にしようと思っていたらしい。あのビルが真島の持ち物だと知って興味を失ったようだが」

裏社会と通ずる谷部のことが心配だったが、孝明と真島家のお抱え弁護士がうまく解決してくれたらしい。

「チャイニーズマフィア?」

「日葵ちゃんには刺激が強いだろうが、限りなく黒に近いグレーな権力者はどこにでも存在するんだよ」

地元の有力な地主として名を馳せてきた真島家には、日葵の想像を越えた付き合いがあるのだろうと、日葵は追求することはやめた。
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