策士な課長と秘めてる彼女
両家の顔合わせが終わり、迎えた週明け。

日葵は退職届を準備してHashimitsuに出社した。

朝一番で発表された、橋満社長の辞任と地元の大企業である真島傘下の子会社にM&Aされるとの発表を受けた社内は大混乱だった。

秘書課には槙の姿はない。

もちろん取り巻きの3人の姿もなかった。

人事部は社員を順番に呼び出し、M&Aを受け入れるにあたってこのまま会社に残るか、退職するかを一人一人に確認した。

「退職します」

日葵は迷わず退職を選んだ。

幸い広報企画部が抱えていた仕事は、M&A後の社内改造で役に立たなくなる。

日葵の有給休暇完全消費と退職は、問題なく受け入れられることになった。

ただ1つ残念なことに、ネット上にリクルート関連記事を出せる状況にはないため、日葵が手掛けた真島課長の記事はお蔵入りすることになってしまった。

「日葵、このまま辞めちゃうんだね」

日葵が槙にされたことを、日葵は蘭と悠馬には伝えていた。

二人は話の内容の過激さに驚きながらも、槙の裏の顔に気づいていたからかすんなりと受け入れてくれた。

各課の部長や課長は、不倫をばらさない代わりに、退職金が減額された状態での退職を受容させられた。

いずれはこうなっていたであろうが、日葵と陽生の交際をきっかけにこんなことになり、日葵は心を痛めていた。
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