策士な課長と秘めてる彼女
「・・・まり、日葵!」
日葵が目を覚ますと、真っ白な天井と陽生の心配そうな顔が見えた。
「火、火は・・・」
ガバッと起き上がった日葵は混乱して慌てふためいた。
「大丈夫、大丈夫だ」
しっかりと抱き締めてくる陽生の体温を感じて日葵は落ち着きを取り戻す。
「あ・・・陽生、さん」
ようやく焦点の合った日葵の目を見て、陽生は泣きそうな顔をしながらもホッとため息をついた。
「私・・・」
「煙を吸って軽い一酸化炭素中毒になったんだ。3日は入院が必要だ」
「柊くんは?」
「長門さんの家だ。柊に怪我はない」
酸素マスクをつけた日葵の頬を、悲しそうに陽生が撫でる。
「この頬の傷はどうした?」
黙りこんで俯く日葵を諭すように
「ダメだよ。隠さないで、話して」
と、陽生が言った。
「槙さんが小石を投げつけてきて・・・」
「あのやろう・・・!」
頬を撫でていない方の左手で陽生は拳を握る。
「ごめんな、日葵を守るって言ったのに、日葵を傷つけた張本人の会社を守るために働いていたなんて、俺は馬鹿だ」
「違うよ。陽生さんは、会社じゃなくて会社で働く職員を守ってるの。だからそんな風に自分を責めないで」
今度は、日葵が優しく陽生の頬を撫でた。
「槙さん、普通じゃなかった。それなのに彼女を煽るようなことを言った私が悪かったのかもしれない」
石を投げられ、家に放火されながらも槙を思いやる日葵はお人好し過ぎる。
日葵の細い体を陽生はギュッと抱き締めると、
「安心しろ、火は消えて家も庭も無事だ。槙も警察に捕まって今は拘置所にいる。心神喪失状態だそうだ。今回の件は谷部は関与していないから再犯はまずない」
日葵は体からホッとして力が抜けていくのを感じた。
「日葵、俺のこと嫌いになった?俺と付き合わなければこんなことにはならなかったかもしれない。だが悪いけど、俺はお前を離してやれない・・・」
抱き締めたままの姿勢で苦しそうに呟く陽生が日葵は可哀想でならない。
「ごめん、俺はそれでもお前を愛してる。不幸にするとわかっていたとしても離れたくない」
苦痛の叫びは、日葵のぼんやりとした脳をも揺さぶった。
「私も・・・不幸になったとしても、陽生さんが大好きだよ」
これを愛と呼ぶのか、正直、今の日葵には難しくてわからない。
だが、この強引で不器用な陽生が愛しくて仕方ないのだ。
「ずっと、そばに・・・いて?」
上目遣いの日葵が、陽生の悲しそうな瞳を射ぬく。
たったそれだけの仕草と言葉が、どれだけ陽生に勇気をくれるか、日葵には全く自覚がなかった。
日葵が目を覚ますと、真っ白な天井と陽生の心配そうな顔が見えた。
「火、火は・・・」
ガバッと起き上がった日葵は混乱して慌てふためいた。
「大丈夫、大丈夫だ」
しっかりと抱き締めてくる陽生の体温を感じて日葵は落ち着きを取り戻す。
「あ・・・陽生、さん」
ようやく焦点の合った日葵の目を見て、陽生は泣きそうな顔をしながらもホッとため息をついた。
「私・・・」
「煙を吸って軽い一酸化炭素中毒になったんだ。3日は入院が必要だ」
「柊くんは?」
「長門さんの家だ。柊に怪我はない」
酸素マスクをつけた日葵の頬を、悲しそうに陽生が撫でる。
「この頬の傷はどうした?」
黙りこんで俯く日葵を諭すように
「ダメだよ。隠さないで、話して」
と、陽生が言った。
「槙さんが小石を投げつけてきて・・・」
「あのやろう・・・!」
頬を撫でていない方の左手で陽生は拳を握る。
「ごめんな、日葵を守るって言ったのに、日葵を傷つけた張本人の会社を守るために働いていたなんて、俺は馬鹿だ」
「違うよ。陽生さんは、会社じゃなくて会社で働く職員を守ってるの。だからそんな風に自分を責めないで」
今度は、日葵が優しく陽生の頬を撫でた。
「槙さん、普通じゃなかった。それなのに彼女を煽るようなことを言った私が悪かったのかもしれない」
石を投げられ、家に放火されながらも槙を思いやる日葵はお人好し過ぎる。
日葵の細い体を陽生はギュッと抱き締めると、
「安心しろ、火は消えて家も庭も無事だ。槙も警察に捕まって今は拘置所にいる。心神喪失状態だそうだ。今回の件は谷部は関与していないから再犯はまずない」
日葵は体からホッとして力が抜けていくのを感じた。
「日葵、俺のこと嫌いになった?俺と付き合わなければこんなことにはならなかったかもしれない。だが悪いけど、俺はお前を離してやれない・・・」
抱き締めたままの姿勢で苦しそうに呟く陽生が日葵は可哀想でならない。
「ごめん、俺はそれでもお前を愛してる。不幸にするとわかっていたとしても離れたくない」
苦痛の叫びは、日葵のぼんやりとした脳をも揺さぶった。
「私も・・・不幸になったとしても、陽生さんが大好きだよ」
これを愛と呼ぶのか、正直、今の日葵には難しくてわからない。
だが、この強引で不器用な陽生が愛しくて仕方ないのだ。
「ずっと、そばに・・・いて?」
上目遣いの日葵が、陽生の悲しそうな瞳を射ぬく。
たったそれだけの仕草と言葉が、どれだけ陽生に勇気をくれるか、日葵には全く自覚がなかった。