策士な課長と秘めてる彼女
楽しそうに話す日葵と蘭、悠馬を見て、陽生は満足していた。

この会社を建てたのは、もちろん日葵のためだ。

就職するときから、父親の会社を継ぐか、系列会社に行くか、はたまた独立するか、どちらでもよいと父は言っていた。

権力を振りかざすなら父親から引き継いだ会社に行くべきだろう。

だが、日葵という女性はそんなものには興味はない。

慎ましく、穏やかで、何よりも自分の価値観や存在意義を大切にする。

そんな日葵の家に居候してから数日後、日葵の部屋に日葵を運んだあの日。

日葵のワークデスクの上にある

"おばあちゃんのレシピ"

と一緒に、陽生はあるものを目にしていた。

複数のデザイン画と一緒に置かれたパソコンメールの印刷。

そこには、ウェブデザイン依頼と独立を促す誘い文、日葵の恩師と思われる大学教授からのメール文があった。
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