策士な課長と秘めてる彼女
それから数ヵ月が過ぎた11月22日。

そう

"いい夫婦の日"

というベタな日に、陽生と日葵は結婚式当日を迎えた。

真っ白なウエディングドレスに身を包んだ日葵は、両親と祖父母に囲まれて幸せそうに微笑んでいた。

「おめでとう、日葵ちゃん。とても綺麗よ」

認知症の進行が危ぶまれていた祖母も、日葵の結婚が決まってからは積極的に認知症の症状を改善する薬を飲むようになり、ずいぶんと明るくなっていた。

今日のガーデンウエディングでも、自慢のフランス料理や祖父の煎れるコーヒーなどを準備してくれている。

ガーデンウエディングを希望したのは日葵だったが、積極的に協力してくれたのは陽生の母、真佐子だった。

真島家自慢のイングリッシュガーデンを改装し、簡易的な祭壇まで準備してくれた。

庭では、イングリッシュロップの毬ちゃんも自由に動いて白ツメ草を食んでいる。

その様子を、いつの間にか仲良くなった柊が見守っている。

参列者は、真島家と蒼井家、日葵の祖父母、sunrise & life コンサルタントの社員、そして高梨家の人々だけというこじんまりとした挙式にした。

晴れ渡る秋の空が、陽生と日葵の結婚を祝福してくれているようだ。

「日葵、体調はどう?辛くなったら早めに言いなさいね」

「大丈夫よ、お母さん。今日はものすごく気分がいいの」

日葵と陽生が一緒に暮らし始めて半年あまり。

その間に、日葵がフリーランスになり、陽生がHashimitsuを辞めて新しい会社を立ち上げ、二人とも在宅で仕事をするようになった。

いつでも日葵と一緒に過ごせるようになった陽生はホクホク顔で日葵を甘やかしてきた。

仕事は基本、副社長の三石悠馬と専務の花菱蘭任せ。

四六時中、日葵と過ごせるようになった陽生があらゆる欲望を我慢できるはずがなかった。

そのため、今、日葵のお腹には4ヶ月目となる胎児が宿っている。

ウエディングドレスが合わなくなるとか、つわりがどうとか、世間体がどうとか、陽生には一切関係なかったらしい。

なんせ、二人の結婚が認められた当日に、日葵に婚姻届けにサインさせ提出を済ませてしまったほどだ。

孫やひ孫を待ちわびていた両家からは、陽生の猪突猛進ぶりに苦笑はされたものの、妊娠自体は大歓迎された。

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