策士な課長と秘めてる彼女
日葵の所属する広報企画課には色々な企画があるが、他社に漏れずインターネットのホームページも運用している。

その中に゛ようこそわが社へ゛という、次年度卒業見込みの就活生向けリクルートページがあるのだが、

゛新人゛というくくりを外された4年目の日葵は、今年度から一人でそのページを担当することを任された。

゛管理職に聞く゛

というページでは、隔月ごとに課長や部長クラスにわが社の魅力を語ってもらうことになっている。

日葵にとっては初めて一人で任された大切な企画だ。

゛失敗は許されない゛と、自分自身を奮い立たせて初企画に望むつもりだった。

幸いにも当社の課長や部長は気さくな人が多い。

父親くらいの年齢の彼らはいつも娘を可愛がるように日葵に接してくれている。

しかし、不幸にも今回のターゲット゛真島課長゛は違う。

若くてイケメンエリート。

今年課長になったばかりの若年出世頭。

そんなエリートの彼には、子供っぽい日葵はうるさくて邪魔な存在なのだろう。

視線を感じて振り返ると、いつも苦々しい表情で日葵を見ている。

睨み付けていると言っても過言ではない時すらある。

真島は、塩顔イケメンで、185cmと背が高く、158cmそこそこの日葵からすると見上げるほどの長身で、威圧感は半端ない。

もちろん、無口で仕事の出来るイケメンの真島はとても人気があるのだが

゛あの目で睨まれると足がすくみとても手が出せない゛

というのが大概の女子社員の感想だ。

幸い、隣の課とはいえ、営業の真島と広報の下っ端の日葵が直接絡むことはほとんどなかった。

そんな真島を怖いと思ったことはないが、ただ、なんとなく嫌われているような気がして苦手なのだ。

だが、どうした神様のいたずらか、日葵の初取材の対象が真島に決まった。

日葵は、意を決して真島に近づくことにした。
< 2 / 149 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop