策士な課長と秘めてる彼女
「どなたですか?」

そこにはあの恐ろしい目で日葵を睨み付ける、真島陽生が立っていた。

「あ、か・・・」

ジロリと睨みを強める陽生に気づいて

「は、陽生さん。いらっしゃい・・・」

と日葵はお辞儀をした。

そんな日葵を見て、陽生がため息をつく。

「日葵、俺のメッセージを見なかったのか?」

「見ましたよ。もちろん」

日葵が欠伸を堪えながら言うと、

「・・・風呂上がりか?・・・くそ、可愛いな」

と最後はなんと言ったかわからないくらい小さな声で陽生が言った。

「えっ?」

日葵の格好は、パールサーモン色のうさ耳パーカーとお揃いの短パン。

長くて白い足はほっそりとして若々しさに溢れている。

無造作に2つに結ばれた髪は、正にロングイヤーラビットのようだった。

「日葵、インターホンの画面で相手を確認したか?」

「いえ、この家にそんなおしゃれなものはつけていません」

「若い娘の独り暮らし、そんな格好で無防備に玄関に出るもんじゃない」

「陽生さん、お父さんですか・・・!柊くんがいるのに襲ってくる馬鹿はいません」

クスクスと笑う日葵を、グイっと陽生が抱き寄せる。

ダイニングからダッシュで駆けてきて、陽生に向かって唸る柊。

「隙を見ればこれくらいのことはできるんだ」

飛びかかろうとする柊を、慌てて日葵が宥めにかかる。

「もう、ふざけないで下さい。さっき顔見知りになったから、柊くんも遠慮してるだけです。私が指示すれば、柊くんも本気でいきますから」

「俺を襲わせるのか?」

「これ以上ふざけるのなら・・・」

フッと笑った陽生は靴を脱ぎ、日葵の手を引いて室内に上がり始めた。

「ちょ、陽生さん!」

「忘れ物を返す」

物質(ものじち)を取られてはダメとは言えない。

日葵は、渋々と、陽生に従った。

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