策士な課長と秘めてる彼女
「うまいな」

「ありがとうございます」

日葵が作った昼食は、カルボナーラとサラダ、クラムチャウダーだった。

「日葵は料理もできたのか」

「クック○ットが先生ですけどね」

フォークにパスタを巻き付けながら、そう言って日葵は笑った。

「柊くんは朝と晩の2食なんです。犬には人間のものは食べさせられないから美味しいものでも共有はできないし、こうして誰かと同じ空間で食事ができるのは楽しいですね」

ニコニコと笑う日葵はやはり小動物のようだと陽生は思った。

「柊は日葵が仕事の間は留守番しているのか?」

「柊くんは訓練を終えたあと警察の審査を受けて民間の委託犬として登録してるんです。一年毎の契約ですが、警察が所有する直轄犬が出払ってるときなどにお呼びがかかります」

「どんな仕事?」

「行方不明者の捜索とか爆発物とか遺留品の捜索ですかね?出動は月一回程度で、それ以外はお留守番か、知人の訓練所で技能維持のための訓練をしてもらったりしてます」

キラキラと目を輝かせながら話す日葵は誇らしそうに柊を見た。

陽生にとっても、自分が全く知らない世界で目新しく興味深い。

何より、仕事以外のことで、こんなに長く日葵と話すことは初めてなのだ。

無理矢理押しかけてきたにも関わらず、嫌な顔ひとつしないで自分を受け入れてくれる日葵に益々関心が高まった。


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