策士な課長と秘めてる彼女

転機

「それで、本当に実行に移したのか?」

「まあな」

「飽きて物が言えないわ」

「喋ってるじゃないか」

「物の例えでしょ?揚げ足とらないで」

月曜日のランチタイム。

陽生と悠馬、蘭の同期生コンビが、近くのカフェで顔を連ねていた。

悠馬と蘭が驚いているのは、もちろん日葵の家に居候することになった経緯についてだ。

3年前、日葵がHashimitsuに入社してきた時から、悠馬も蘭も、陽生が日葵のことをただの部下以上に意識していることに気づいていた。

新入社員歓迎会のときから日葵と仲良くなった蘭と、同じ広報企画部の上司として日葵と接点のある悠馬に、陽生は何らかの情報を得ようと画策しているのが手に取るようにわかっていたからだ。

飲み会ついでに情報を得ようにも、新入社員歓迎会以来、日葵は会社の飲み会には一切参加しなくなった。

仕事場においては、当時、営業部の主任であった陽生と広報企画部アシスタントの日葵はほとんど接点がなく、焦る気持ちで隣の部署の日葵を見つめれば、睨まれていると勘違いしたのか、益々距離を置かれるようになってしまった。

頼みの綱の蘭は、結婚、妊娠で身辺が忙しくなり協力が仰げなくなったばかりか、産休育休をとって、この間の3月まで休んでいたのだ。
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