策士な課長と秘めてる彼女
「なんか、日葵と彼氏の話、色っぽさに欠けるのよねぇ。デートもランニングとか散歩とかだし、食事に行った話も聞かない。偽装結婚ならぬ偽装恋愛ね」

復職後1ヶ月。

蘭は、毎昼、日葵を誘ってランチに出かけた。

もちろんスポンサーは陽生で、その間の社食のチケットは彼持ちだ。

『復職のお祝いに会社から社食のチケット3ヶ月分が貰えた』

と、蘭が嘘をつけば、素直な日葵は゛御相伴に預りラッキーです゛と蘭のランチに付き合ってくれた。

「入社したての3年前は、その彼にも余裕がなくて大変だったらしいけど、今はかなり仕事も覚えて落ち着いたらしいの。だけどその割には日葵のプライベートが充実しないじゃない?絶対に脅されてるか何か秘密があるわね」

蘭の言葉に、陽生は今まで謎の彼氏の存在に遠慮してきた自分を憂いた。

゛秘密を暴いて日葵を我が物にする゛

強力な゛蘭゛という協力者を得た陽生は、調子づいて日葵の上司である悠馬をも巻き込むことを決意した。

「悠馬、今期から蒼井を独り立ちさせる予定だったな?あれ、リクルート用の広告担当にさせろ。そして俺の取材にあてるんだ」

「はあ?公私混同もいい加減にしろよな。蒼井には、レストラン用メニューの写真撮影とデザインを担当させるはず・・・」

「営業の南・・・」

「あっ・・・」

゛公私混同反対゛

と強気の姿勢だった悠馬だが、゛南゛という名前を聞いて黙り込んだ。

南こそ、悠馬が現在狙っている営業アシスタントの新人。

つい先日、陽生も、広報企画部の若手男性と営業アシスタントの女性の合コンセッティングに協力してやったばかりだ。

「一時的にリクルート広告担当にして、やっぱり適性はデザインだったと言って担当を変えれば問題ない。蒼井がインタビューする重役なんて俺一人で十分だしな」

これまであんなにヘタレだったのに、調子づくとどこまでも腹黒い陽生に悠馬は苦笑した。

「ま、まあな。4年目は適性をみて配属先を最終決定する期間だからできなくもないが、無茶を聞くのもこれっきりだからな。うまくやれよ」

「ああ」

こうして、陽生が日葵の秘密を暴露させる舞台は整った。

その後は、ご覧の通りである。
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