策士な課長と秘めてる彼女

「今までお仕事ですか？」

「ああ、ビル倒壊事故の行方不明者探しが難航しててね。ようやく最後の被災者が見つかったから今夜は帰れることになったんだ」

輝顕の顔には疲労が浮かんでいた。

「ああ、良かった。やっと愛海ちゃんとゆかりさんが安心しますね」

そう言った後に、

゛輝顕さんの奥さんと子供です゛

と耳打ちする日葵。

゛妻帯者゛か

と、不敵な笑みを見せる陽生に、輝顕が笑って

「案外、日葵にゾッコンみたいで安心したよ」

と言った。

「これからは俺が日葵を心配するので、高梨さんは安心して奥さまと子供さんに集中してください」

牽制する陽生に

「そうするよ」

輝顕は手をブラブラと数回振ると、疲れた体を引きずるようにして離れに消えていった。