策士な課長と秘めてる彼女
「陽生さん、ご飯たくさん食べますか?それとも少し?」

「そうだな、腹が減ってるからいくらでも食べられそうだ。な、柊」

お座りの姿勢で尻尾をパタパタと床に打ち付ける柊も、陽生の言葉に同意しているようだ。

「フフ。陽生さんも柊くんに負けず劣らずの食いしん坊ですね。お料理の間にお風呂入ってきて下さい」

「わかった」

柔らかく微笑む陽生は、柊を連れてバスルームに向かった。

訓練の後で、柊の体も埃っぽくなっている。

今週の月水金の訓練の後は、こうして柊のシャンプーは陽生が担当してくれていた。

警察犬の訓練を受けた柊は、闇雲に他人を威嚇したりはしないが、好き嫌いはあるらしく、気に入らない人物には全くなつかないし愛想がないのだ。

それを考えると、初めは警戒していたものの、陽生に対する柊の態度は破格の待遇といえるかもしれなかった。

丁度、夕飯が出来上がったタイミングで、陽生と柊がシャワーから戻ってきた。

「今日は唐揚げか。ずいぶん揚げたんだな」

大皿いっぱいに盛られた唐揚げを見て、陽生が苦笑する。

「はい。鶏肉が安かったので奮発しちゃいました。はい、こっちは柊くんの」

犬用に調理した鶏肉を見せると、普段クールな柊も舌なめずりを繰り返して喜んでいる様子だ。

「柊、stay・・・。Ok、good boy!」

日葵の言葉を聞き分け、柊は合格の合図を受けて、嬉しそうに夕食を始めた。

「私達も頂きましょう」

にっこり笑う日葵と陽生。

端から見ると新婚さんのようだな、と陽生は内心思っていたが日葵に警戒されないように、あくまでも無害でいい人の顔を取り繕っていた。

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