策士な課長と秘めてる彼女
「ごめん。せっかくの食事を中座してしまって・・・しかし、ずいぶん減ったな」

3分の2に減った大皿の中の唐揚げを見て、陽生が苦笑した。

「ごめんなさい、食べ始めたら止まらなくて」

「そんなに小柄で痩せてるのに結構、大食漢なんだな。驚いた」

「食いしん坊なんです。私も」

テヘっと恥ずかしそうに笑う日葵が可愛い。

「それよりも、お電話大丈夫でしたか?なんか深刻そうでしたが」

再び、食事を始めた陽生に、日葵が遠慮がちに尋ねてきた。

「ああ、ちょっと実家で困ったことがおきて・・・」

「えっと、話しづらいことなら言わなくても大丈夫です。プライベートなことには立ち入りませんので」

「そんなんじゃないんだ。むしろ助けてもらいたいくらいで・・・」

黙々と食事を続ける陽生は、ちらちらと日葵と柊を見てくる。

「私でお役に立てることですか?」

「だが、もう20時だし、迷惑だろうから・・・」

「大丈夫です。明日は土曜日でお休みでしょ?送迎や柊のゲージとかシャンプーとか、いつも陽生さんにはお世話になっていますから、何でも申し付けてください」

元気な日葵の声に、申し訳なさそうに眉間に皺を寄せる陽生だったが、内心ほくそ笑んでいたことは日葵にわかるはずもなかった。
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