策士な課長と秘めてる彼女
食事を終えた日葵は、私服に着替えて陽生の運転するワンボックスカーに再び乗り込んだ。

なぜか柊も一緒だ。

「ご実家に向かうのですか?こんな夜分に他人の私がお邪魔するのは失礼に値するのでは・・・」

「いや、あっちは感謝こそすれ、日葵を邪険にすることはできないよ」

「そうでしょうか・・・?」

突然、陽生の実家を訪問することになった日葵だが、理由を聞いても陽生はなかなか本当のことを教えてくれなかった。

夜ということもあり不安も募るが、毎日良くしてくれている課長の頼みだ。何があってもやれることをやろうと日葵は心に誓った。

「ただいま戻りました」

「陽生さん!待っていたのよ・・・。って、そちらはどなたかしら・・・」

玄関のチャイムを聞いて飛び出してきた女性は、陽生の後ろに立っている日葵と柊を見て、はじめの勢いを無くしてたじろいている。

「こちらは、同じ会社の蒼井日葵さん。そしてその相棒の柊くんです」

ペットと言わずに相棒と言ってくれた陽生に、日葵は微笑む。

「い、犬をこの家に連れてくるなんてどういうつもり?しかもそんなに大きくて獰猛そうな犬、噛みついたらどうするつもりなの」

やはり歓迎されていない、と俯きそうになる日葵の肩を抱くと、陽生は、

「ただの犬じゃない。柊は現役の警察犬なんですよ。お母さん」

と、目の前の女性に向かって告げた。

「け、警察犬?」

そう呟いた女性はとても若々しくて綺麗で、陽生に似ていた。
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