策士な課長と秘めてる彼女
「さあさあ、日葵さん。こちらに来て」

無事に毬ちゃんをゲージに戻した真佐子は、本来の明るさを取り戻したように元気になり、日葵をリビングのソファに誘導した。

「いえ、もう遅いですしお暇させてもらおうかと・・・」

「何を言ってるの?まだ21時でしょう?子供は寝る時間だけど、陽生さんも日葵さんもこんな時間はまだ宵の口でしょ。それに今日は花金ですもの」

゛犬が怖い゛

と言っていた真佐子も、賢くて大人しい柊にすっかり心を開き、勇気に至っては、もともとの動物好きも相まって、柊の横にベッタリとくっついている。

抱きつかれる柊もまんざらではない様子でされるがままになっている。

「ほら、勇気も柊くんになついたみたいよ。ゆっくりしていって。ね、日葵さん」

年上の女性に、上目遣いで可愛らしく訴えられては断れない。

日葵はゆっくりと陽生を見る。

微笑みをたたえて頷く陽生を見て、日葵は観念した。

いずれにしても、陽生に乗せて帰ってもらわなければ蒼井家には帰れないのだ。

陽生の実家はH県でも少し片田舎にある。

この地域の名家らしく、いわゆる地主らしい。

「タクシーを呼んでも来ないわよ」

と真佐子に言われ、日葵は

「では、もう少しだけ」

と、真佐子の誘いに乗ることにした。


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