策士な課長と秘めてる彼女
翌日の金曜日、18時50分。

日葵は、駅前のロータリー側入り口で真島を待っていた。

スマホの連絡先は知らない。

だけど、なんとなくスマホを見ていたら落ち着く気がして、日葵は意味もなく登録していたアプリを開いたり閉じたりしていた。

「悪い。待たせたか?」

目の前に影を作った男性を見上げて、日葵はその大きさに少し驚いた。

上司の悠馬も180cmと大きいが、真島はそれ以上に大きい。

「いえ、私も今来たばかりです。こちらこそ、時間外にお手間を取らせて申し訳ありません」

ペコリと頭を下げる日葵は、更に小さくなり、まるで大学生と小学生のようだと、日葵は心のなかで自嘲した。

「じゃあ、行くか」

押し寄せる人の波を縫うように、真島が日葵の肩を抱き寄せて庇って歩く。

゛ああ、真島課長って柊くんに似てる゛

逞しい体躯に引き締まった腕。

野性味のある凛凛しい顔つき(塩顔だけど)。

どこをとっても完璧な彼に社内の女性がメロメロになるのもわかる気がした。

「どうした?気分が悪いのか?」

こうして日葵を気遣う優しさも似ている。

いつも日葵を睨み付けるばかりだった真島に、日葵は親近感を覚え始めていた。

「いえ、大丈夫です」

そういって日葵が微笑むと、真島はふぃっと顔を反らした。

近づこうとすると離れようとする。

゛そんなところまで、出会った頃の柊くんにそっくり゛

ほんの数分で、日葵は真島への苦手意識が消えていくのがわかった。
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