策士な課長と秘めてる彼女
日葵はゆっくりと立ち上がると寝巻きがわりのうさ耳パーカー上下と下着を持ってお風呂に向かった。

体を洗ってゆっくりと湯船につかる。

すると酔っていた頭が冴えてきて、今日までの出来事が走馬灯のようによみがえってきた。

「私、2回も真島課長とキスしちゃったの?」

どんな成り行きかわからないが、酔った勢いでキスをされている状況は確かだ。

「課長は酔った部下となら誰とでもキスをするの?」

恋愛経験のない日葵には恋の駆け引きなどさっぱりわからない。

ただ、真島課長に触られるのもキスされるのも嫌ではなかった。

考えてみたら、初めて出会ったときから好印象を抱いていたと思う。

イケメン過ぎておそれ多いと思っていたため眼中には敢えて入れないようにしていたのかもしれない。

思いがけず日葵の日常に入り込んできて、図らずもその一部になりそうな気配すら醸し出している。

おまけに、課長のご両親と弟、毬ちゃんにまで会ってしまった。

皆、とてもいい人で、突然現れたよそ者の日葵と柊を歓迎してくれた。

「あんまり優しくされると勘違いしちゃうよ」

日葵はずるずると身体をお湯の中に沈めた。

これは、元水泳部だった日葵が心を落ち着かせるためによくやるルーチンワークのようなものだ。

それを数回繰り返すうちにすでに一時間近くが経過していた。

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