策士な課長と秘めてる彼女
「まあ、日葵。お帰りなさい。お父さんもおばあちゃんもおじいちゃんも喜んで待ってるわよ」

玄関の開き戸を開けると、中から日葵の母・夏子が現れた。

「そちらが真島さん?」

柊のリードを引いてきた背の高い男性を、夏子がじっと見つめた。

「はじめまして。真島陽生と申します。日葵さんとは結婚を前提にお付き合いさせていただいています」

゛結婚を前提?゛

寝耳に水な情報に、日葵も夏子も目と口を開けて驚きを露にする。

「そ、そうなのね。日葵ったら何も教えてくれないから、驚いてしまったじゃない。とにかく入って」

イソイソと案内する夏子を尻目に、日葵は陽生を視線で責める。

しかし、陽生はどこ吹く風だ。

堂々と玄関をくぐり土間を跨いで、日葵の祖父母と父の待つ室内へ向かって歩いて行った。
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