策士な課長と秘めてる彼女
7歳年上の百戦錬磨(他者評価)のイケメン課長。

考えてみれば、そんな手練れの陽生に初心者の日葵が叶うはずはなかった。

男は視覚で、女は聴覚で恋をすると言うが、優しく扱いながら愛を囁く陽生の低音ボイスは効果覿面だった。

情事の後、日葵は我に返り、真っ赤になって陽生に背中を向けた。

無理矢理ではない。

自分で受け入れて同意をしたからこんなことになったはずだ。

しかもここは母の実家で祖父母の家。

そんな神聖な場所でなんてことをしてしまったのかと日葵は羞恥に耐えていた。

「日葵」

「なあ、日葵。こっちを向いて・・・」

本当にこの悩殺ボイスは甘く抗えそうにない。

ゆっくりと陽生に向き合う日葵。

「そんなに俺、下手だったか?」

「そんなのわかるわけない!知ってるくせに意地悪言わないで」

「日葵に嫌われたら俺、秒で死ねる」

「やめて、冗談でもそんなこと言わないで」

ギュッと陽生を抱き締める日葵の顔を覗き込んで、陽生が上目遣いで言う。

「俺のこと好き?」

「うん。好きだよ。大好き」

「良かった。俺も好き。これからもよろしくな」

目新しいプロポーズの言葉もなかったけれど、陽生の本気が伝わったシンプルな愛の囁きだった。

いつか゛愛してる゛に変わるのかな?

日葵はうっとりとそう考えながら、陽生の言葉に頷いていた。

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