策士な課長と秘めてる彼女
日葵が書類を渡して印刷所を出ると、スマホの着信音が聞こえてきた。

゛今日は帰りが遅くなる。先に帰っていてくれ゛

陽生からのSNSメッセージだ。

陽生には蒼井家の鍵は渡していない。

陽生は蒼井家に居候するようになって、常に日葵にベッタリと張り付いていたから、鍵を渡す必要性がなかったからだ。

゛槙ちゃん゛との仲良さそうな様子を見た直後で、日葵の頭は冷めきっていた。

鍵を渡す前で、婚約が決まる前に全てがわかって良かったのかもしれない。

きっと、今日の夜の用事も゛槙ちゃん゛と社長絡みに違いない。

タイミングよく、柊は警察の仕事で数日は不在になる。

日葵が自宅に居なければならない理由はなくなった。

日葵は頭を冷やして冷静になるために、陽生と距離をおくことを決意した。

゛わかりました゛

そう、陽生には返信をして、日葵は今夜からしばらく贅沢して気を紛らわせるために近くの高級ホテルに一人で泊まることを決意する。

陽生には退社後に知らせればいい。

どうせ妥協と利用するだけの相手の日葵なんて気にもしないだろうから。

日葵は纏まらない思考で、フラフラと歩きながら、今夜はゆっくりと一人の時間を満喫しようと心に誓うのだった。
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