策士な課長と秘めてる彼女
退社時間が過ぎても、陽生は営業部の自分のデスクで作業をしていた。
今夜は、社長に誘われて得意先との接待に参加しなければならない。
このところ日葵と行動を共にしていたツケもある。
日葵との結婚に向けて、ある程度の目処がたったこともあり、陽生は少し警戒を解いていたのかもしれない。
懐石料理を前に、取引先の社長と自社の橋満社長と話を合わせる。
「お宅の娘さんには真島くんのような優秀な社員がふさわしいだろうね」
そんな相手先の社長の言葉に
「いやいや、真島くんは我が娘との縁談を蹴って、わが社の社員である女性と結婚するらしいんですよ。薄情だとは思いませんか?」
と橋満社長が苦言を呈する。
橋満槙(はしみつまき)とは、親戚関係だが、男女の関係であったことは一度もない。
槙が勝手に陽生を好きだと公言し、社長が勝手に将来は二人が結婚するものと信じていただけだ。
陽生が日葵を落とそうと思ったタイミングで、たまたま橋満社長から槙との縁談の話がきた。
槙が今朝言っていたような事実はない。
あくまでも偶然が重なっただけだ。
橋満社長の口ぶりから、日葵と陽生の結婚には不服のようだが、一応は納得してくれているらしい様子が伺えた。
陽生は相手先の社長にも日葵との結婚する旨を伝えると、トイレに行くと言ってその場を中座した。
溜め息をつきながらスマホに目をやる。
「あー、日葵不足だ」
金曜からずっと日葵とベッタリ一緒にいた反動からか、今日は全くと言っていいほど日葵の顔が見られなかった現実が寂しく感じる。
゛だか、日葵はもう俺のもの゛
そんな甘い考えも、スマホのSNSメッセージを見てからはあっという間に吹き飛んでしまった。
『今日は蒼井家には誰もいません。柊くんも私もしばらく不在にしますので、陽生さんは実家にお帰りください』
そんなメッセージに陽生の目の前が真っ暗になる。
全ては順調なはずだった。
゛俺はどこで間違った?゛
仕事では負け知らずの真島課長でも、ただの男に戻れば不器用な陽生としての本性が露になる。
『それで、日葵の気持ちもちゃんとついていっているのかしら?』
そう言った今朝の蘭の言葉が何度も頭の中を反芻する。
離席できない状況に、陽生はイライラを隠しながらも、早く接待が終わることだけを願っていた。
今夜は、社長に誘われて得意先との接待に参加しなければならない。
このところ日葵と行動を共にしていたツケもある。
日葵との結婚に向けて、ある程度の目処がたったこともあり、陽生は少し警戒を解いていたのかもしれない。
懐石料理を前に、取引先の社長と自社の橋満社長と話を合わせる。
「お宅の娘さんには真島くんのような優秀な社員がふさわしいだろうね」
そんな相手先の社長の言葉に
「いやいや、真島くんは我が娘との縁談を蹴って、わが社の社員である女性と結婚するらしいんですよ。薄情だとは思いませんか?」
と橋満社長が苦言を呈する。
橋満槙(はしみつまき)とは、親戚関係だが、男女の関係であったことは一度もない。
槙が勝手に陽生を好きだと公言し、社長が勝手に将来は二人が結婚するものと信じていただけだ。
陽生が日葵を落とそうと思ったタイミングで、たまたま橋満社長から槙との縁談の話がきた。
槙が今朝言っていたような事実はない。
あくまでも偶然が重なっただけだ。
橋満社長の口ぶりから、日葵と陽生の結婚には不服のようだが、一応は納得してくれているらしい様子が伺えた。
陽生は相手先の社長にも日葵との結婚する旨を伝えると、トイレに行くと言ってその場を中座した。
溜め息をつきながらスマホに目をやる。
「あー、日葵不足だ」
金曜からずっと日葵とベッタリ一緒にいた反動からか、今日は全くと言っていいほど日葵の顔が見られなかった現実が寂しく感じる。
゛だか、日葵はもう俺のもの゛
そんな甘い考えも、スマホのSNSメッセージを見てからはあっという間に吹き飛んでしまった。
『今日は蒼井家には誰もいません。柊くんも私もしばらく不在にしますので、陽生さんは実家にお帰りください』
そんなメッセージに陽生の目の前が真っ暗になる。
全ては順調なはずだった。
゛俺はどこで間違った?゛
仕事では負け知らずの真島課長でも、ただの男に戻れば不器用な陽生としての本性が露になる。
『それで、日葵の気持ちもちゃんとついていっているのかしら?』
そう言った今朝の蘭の言葉が何度も頭の中を反芻する。
離席できない状況に、陽生はイライラを隠しながらも、早く接待が終わることだけを願っていた。