策士な課長と秘めてる彼女
橋満社長と相手先の社長と別れ、陽生は蒼井家に向かった。

日葵の言った通り、家には電気がついておらず、人のいる気配もしない。

正直に言うと、陽生のマンションの修理は終わっていた。

だからこのままマンションに帰っても差し支えはない。

だが、問題はそこではない。

柊と日葵が蒼井家に帰っていない現状が謎なのだ。

朝、陽生は日葵と柊を乗せ、高梨警察犬訓練所に向かった。

月水金は、柊の訓練日だからだ。

あのときは何も変わった様子はなかった。

日葵の作った朝食を食べ、二人の時間を幸せに感じていた。

一晩もしないうちに状況が変わった。

予期せぬ災害に見まわれた気分だ。

高梨警察犬訓練所に確認しようにも、今はもう22時だ。朝の早い訓練所のスタッフはもう寝ているかもしれない。

焦る気持ちと裏腹に、陽生はただ立ち尽くすしかなかった。

スマホに電話をしても、メッセージを送っても連絡が取れない。

陽生は仕方なく、自分のマンションに戻った。

明日も仕事だ。

職場にいけば日葵がどんなに嫌がっても顔を合わせることになる。

陽生はそう自分に言い聞かせてシャワーを浴び、眠れない一夜を過ごした。
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