策士な課長と秘めてる彼女

本気という名の悪意

「ふうん。日葵休みなのね」

焦る陽生をもろともせず、蘭は自分のデスクに荷物を置きながらニヤリと微笑んだ。

「何がおかしい」

イライラのぶつけ場所がない陽生はジロリと蘭を睨んだ。

「だから聞いたでしょう?ちゃんと日葵の気持ちがついてきているのかって」

それを言われると反論はできない。

強引に話を進めてきた自負はある。

だが、想いを確かめあって、同意のもと身も心も一つになった。

その点だけは無理強いをしたつもりはない。

「真島のこと眼中にも入れていなかった日葵が真島と婚約したと聞いて、槙ちゃんの取り巻きが黙っているはずはないと思ってたの」

蘭の言葉を聞いてうつ向いていた陽生がバッと顔を上げた。

「槙ちゃんはああ見えて秘書課のボスよ。真島は仕事はできるけど、恋愛における洞察はまるで節穴ね」

陽生は、社長から持ちかけられた槙との婚約話について思い出していた。

゛槙が秘書課のボス?゛

昔から陽生一筋で甘えたで奔放なところはあったが、陽生に迷惑が及ばないならと放置していた。

知らないところで日葵に何らかの魔の手が及んでいるのかもしれない。

陽生は居てもたってもいられなくなって駆け出していた。
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