策士な課長と秘めてる彼女
「おはようございます。真島課長」

「槙、お前、日葵に何かしたのか？」

突然秘書課に飛び込んできた陽生に、朝礼をしていた秘書課の面々が驚きで固まっていた。

そんな中、槙だけはにこやかに笑っており少し不気味だ。

「何のことですか？蒼井さんのことなど私は知りませんけど」

おどけた顔で肩を竦める槙。

そんな槙と陽生の様子を見比べながら、満足したように小さく笑った秘書課のボス中島の姿を陽生は見逃さなかった。

「あんた、何か知ってるのか」

陽生の睨みにも動じず

「いいえ、何も。でも昨日蒼井さんとお話しする機会があったのですけど、おかしなことに蒼井さんは真島課長との結婚話、何がなんだかわからないって感じで困ってましたよ。課長ったら槙さんと婚約されているのに、あんな将来性のない子を相手にするなんて時間の無駄ですよ？」

と中島は微笑んで言った。

槙も他の秘書課のメンバーも同様に微笑んでそれを見ている。

ただの営業部課長に取り繕うより、社長の娘の取り巻きとして腹心のふりをしているのが賢明だとでも思っているのだろう。

陽生はニヤリと笑って

「日葵に何かしたとわかった時は覚悟しろ。勘違いするな。偉いのは社長であって、その付属品じゃない。槙・・・、お前のことは親戚のよしみで今まで放置してきたが、日葵と俺の邪魔をするなら容赦しない」

足元にあったゴミ箱を壁に向かって蹴り上げた冷徹な真島課長を見て、秘書課の面々が震え上がった。

「後悔するまで追い詰めてやる」

背を向けて秘書課を去る陽生は、自分の詰めの甘さに唇を噛み締めていた。
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