策士な課長と秘めてる彼女
「槙さんは・・・これまで取り巻きのお姉さま方にブランド物をプレゼントしたり、定期的な食事会や誕生日会を開いて彼女達を買収して意のままに操ってきたんです。彼女達はその見返りに、真島課長に好意を持っている女性社員に嫌がらせをして排除してきました」

手塚の話に陽生も思い当たる節はいくつかあった。

陽生がこれまで優秀だと目をかけてきた女性社員が、ことごとく早期退職したり異動を申し出たりしていたからである。

゛一身上の都合゛

どれもが、曖昧な理由だった。

それが本当なら、人事部も社長も、槙の支配下にあるということか?

陽生の内心は怒りで煮えたぎっていた。

何よりも日葵にちょっかいを出したことが許せない。

陽生の本気を適当に取り扱っているのも癪に触る。

日葵は現にここにいない。

まさに敵の思うツボの状態なのだ。

「ありがとう。情報提供してくれて」

「日葵ちゃんは大丈夫ですか?・・・これまで被害にあったスタッフは皆、そのう・・・心を病んだものですから・・・」

言いづらそうな手塚は本当に日葵を心配してくれているのだろう。

「大丈夫だ。俺が守る」

言い切った陽生の凛々しさに、手塚がポッと頬を染めた。

そんな手塚に目もくれず、陽生は走り出す。

「日葵ちゃん、愛されてるんだね」

といった手塚の呟きはもちろん陽生には聞こえていなかった。
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