策士な課長と秘めてる彼女
「方法はないこともないが、これはプライバシーが関わる問題だから、トラブルが起きたときの最終手段なんだ。誰にでも教えるわけにはいかない。それに、君の話を聞いていると責任の一端は君にもあるように思えるんだが・・・」

陽生は、槙の取り巻き秘書から日葵が受けたらしい嫌がらせについて長門に話して聞かせた。

長門は難しい顔で腕組みをして聞いていたが、

「何故日葵ちゃんが君に連絡もせずに行方をくらましているのかを加味しないで、一方的に君の味方をすることはできない」

と首を振った。

「おっしゃることはわかります。僕の詰めが甘かったことも、会話を省略しすぎていたことも事実です。でも、こうしている間に、日葵に何かあったらと思うと居てもたってもいられません。彼女の傍にいたいんです」

あまりに必死な陽生の様子に、長門はため息をついた。

「彼女も大人だ。早まったことはしないと思うが、頼りの柊は傍にいない。輝顕は始終連絡をとれる態勢でいるとは思うが任務中だ。個人的な連絡はできない」

長門はそう言うと、上着のポケットからスマホを取り出した。

「彼女にもGPSを持たせている。日葵ちゃんには柊の居場所がいつでもわかるだけでなく、輝顕や私、日葵ちゃんも互いの居場所を把握することができるようになっている。・・・だからこそ滅多にこのアプリを開くことはないんだが」

長門は、躊躇いがちに陽生にスマホをかざして見せた。

GPSが示している日葵の位置情報は、H県の海沿いにある有数のリゾート地に位置する体験型の水族館だった。

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