クールなオオカミの過剰な溺愛
けれど───
「……っ!」
中庭へと足を踏みいれたその時、ふと人影が視界に映った。
「あの、水瀬くん…!一度声をかけられた時からずっと水瀬くんのことが気になってて…」
さらには“水瀬くん”と呼ぶ女子の声も聞こえてきて。
引き返せばよかったものの、咄嗟にしゃがみこんでしまう。
運良く中庭に繋がる扉が前開だったため、そこに姿を隠すようにうずくまった。
このまま帰るべきかもしれない。
けれど凛花と合流場所は中庭だし、何よりこれはチャンスである。
そーっと物音ひとつ立てぬよう覗けば、そこにはかわいらしい小柄な女子と真剣な顔つきで彼女を見つめる水瀬くんが向かい合っていた。
きっと凛花を好きな水瀬くんは断るだろう。
もし今すぐ凛花が来て!この告白のシーンを聞いたら……なんて淡い期待を抱く。