クールなオオカミの過剰な溺愛
そんな水瀬くんの笑みを見た私は、ふとあの日の出来事を思い出した。
彼と同じ日直だった日のことを───
『正直ウザいんだよね、騒ぐ女って。
それに比べて夏原さんは静かで心が落ち着くよ』
そうだ、水瀬くんの裏を見たあの日のことをすっかり忘れていたけれど。
私はなんてバカな人間だろう。
忘れてはいけなかったのではないか。
だって今、目の前にいる彼もあの日のように───
「やっぱり俺は他人も自分も嫌いみたいだ」
屈んで私と同じ目線になり、その瞳に捉えられる。
その声はひどく冷たいのに、瞳は切なげに揺れているようにも見えた。
私はゴクリと息を呑んだだけで何も返せなかった。
容易に返せるはずがなかった。