クールなオオカミの過剰な溺愛



慌てて煌哉から離れ、鞄からポーチを取り出す。


「ちょ、ちょっと待っててね!」

今は悲しいとか苦しいとか、そんな感情よりも恥ずかしさが勝っていた。


トイレに駆け込んだ私は、鏡に映る自分を見て軽く落ち込んでしまう。

これは完全に涙で化粧が崩れていた。


せっかくマシになれたというのに、やっぱり今日はツイていない。

落ち込みながらもポーチから化粧落としシートを手に取り、それで化粧を完璧に落とした。



「……あーあ」


再度鏡に映る自分を確認すれば、もういつも通りの自分に戻っていて。

相変わらず目立たない、薄い顔をしている。
こんな顔にキスした水瀬くんは本当に悪趣味な男だ。

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