クールなオオカミの過剰な溺愛



ただ相談相手がいないのもきつい。

凛花になら何か良いアドバイスをくれるだろうか、と少しだけ期待するけれど。



「あっ、ごめん水瀬。
椅子勝手に使ってる」

「……っ」


話そうと決心した瞬間に水瀬くんが教室に入って来たのだから本当にタイミングが悪い。

さらに凛花は私の前の席である水瀬くんの椅子に座っていたのだから、会話を回避することは不可能であった。


「大丈夫だよ、気にしないで」


いくら水瀬くんがそう言ったからって、凛花もすぐにどけばいいというのにその気はないようで。


水瀬くんが机に鞄を置いた後も椅子から立つ気配はない。


「凛花、どいたほうがいいんじゃ…」

「いや、ホームルームが始まるまでは座ってくれて大丈夫だよ」

「さすが優男の水瀬ね、お言葉に甘えて!」


もしかしたら心の中で『早くどけよ』と思っているかもしれないというのに、決して立ち上がらない凛花。

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