クールなオオカミの過剰な溺愛
同じ学年であり、同じマンションだったけれどたまにすれ違う程度で会話はない。
さすがの私もそんな彼を見過ごすことができず。
つい話しかてしまったのが、すべての始まりだった。
「そんなところにいたら風邪ひくよ?」
小さい折りたたみ傘を傾け、せめて頭上は濡れないように試みるけれどもうずぶ濡れの彼。
「……別に」
「家は?鍵忘れたの?」
不良ということはつまり怖い印象があるかもしれないが、私は特に恐怖心を抱くことはなく。
いつも友達と話す感覚で彼に話しかけていた。
「帰りたくないだけ」
すると彼は私と視線を合わせることなく、投げやりに言葉を放った。
帰りたくない、というのはそれだけ事情があるのかもしれない。
けれどこんなところにいれば目立つだけでなく、風邪を引いてしまう。