クールなオオカミの過剰な溺愛
「…………」
「み、水瀬くん…?」
けれど彼が口を開くことはもうなかった。
どうやら眠ってしまったようだ。
揺すっても起きず、ピクリともしない。
完全に夢の中だ。
まさか肩に頭を置かれた状態で寝られるとは思っていなかったけれど。
電車に乗っている人たちからは少し視線を感じてしまうため、私は目を閉じて気にしないことにした。
今日だけは、許してあげよう。
水瀬くんは単に不器用なだけで、本当は誰かに甘えたかったのだろうか。
今の彼は簡単に壊れてしまいそうなほど弱い。
「───美織…」
そんな彼が名前を呟いた。
それも女の人の名前。
それからぎゅっと私の手を握って、今にも泣き出しそうだ。